ブラウザでボードゲームを作ってみる(Colamone開発ブログ)

ブラウザで遊べる二人零和有限確定完全情報ボードゲーム「Colamone(コラモネ)」の開発記録を淡々と綴るブログです。


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ボードゲームRobot Masterレビュー

Colamoneに続くボードゲームの案を練っているのですが、さっぱり良いアイデア思いつきません。

という訳で今日はボードゲームのレビューでもしてみようかと思います。 名作を分析してるうちに何かいいアイデアが浮かぶかもしれません。

Reiner Knizia’s Robot Master

今日レビューしてみるのはライナークニツィアというとてもとても有名なゲームデザイナーが作ったRobot Masterというボードゲームです。

iPhoneアプリ版(100円)もあります。というか自分はアプリでしか遊んだことがありません。はたしてレビューする資格があるのでしょうか。

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Robot Masterのルール

まずはRobot Masterのルールから解説していきたいと思います。

  • 5x5のフィールドに1〜5の数字の書かれたパネルを交互に手札から配置するゲーム。
  • 先手はタテの列の数字を、後手はヨコの行の数字を大きくすることを目指す。
  • 同じ列(行)に同じ数字が2つある場合、その数字を10倍、3つの場合は100として扱う。
  • 最も点数の低い列(行)を作ったプレーヤーの負け。

はい、ルールはたったこれだけ。
イメージできたでしょうか?できないですよね。

実際のゲーム画面はこんな感じです。

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1枚だけパネルが配置された状態でゲームが始まります。

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手前の数字が先手の点数、右の数字が後手の点数です。

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もっとも小さな行(列)を作ったプレーヤーの負けです。 上の画像だと、後手(右)のプレーヤーの負けです。

おわかり頂けたでしょうか。
これ以上でもこれ以下でもありません。

Robot Masterの10の魅力

たった4行で説明できる超シンプルなこのゲームの魅力を10個挙げてみたいと思います。1行あたり2.5個、凄い燃費効率ですね。
ここから先はゲーム紹介というより考察です。遊んだことのない人には伝わらないかもしれません。100円なんだからもう買ってください。

Reiner Knizia's Robot Master

Reiner Knizia's Robot Master

  • Conlan Rios
  • ゲーム
  • ¥100

はい、ではここから10個挙げてみます。

①もっとも点数の低い列を比べて大きいほうが勝ち

とてもとても分かりやすいこのゲームのとてもとても腑に落ちないこのルール。すべての列(行)の合計を比べるわけでもなく、最大の列(行)の点数を比べるのでもなく、なぜか最小の列(行)を比べるこの違和感。直感に反するこの気持ち悪さは何なんでしょうか。

実はここが重要なんです。 何回か遊んでみれば分かるのですが、このゲームは得点稼ぎゲームではなく妨害ゲームです。"最小を比べる"というルールのお陰で、「相手そっちのけで得点を増やすゲーム」から「いかに相手の点数を低く抑えるか駆け引きするゲーム」へと変貌しています。このひとつまみのスパイスでゲームがグッと引き締まります。

②点数計算が脳のワーキングメモリーに収まる

人並みの計算力があれば、数字を10回や20回足していくことは容易なことでしょう。しかしそれを一瞬で行うのは至難の技です。
一方このゲームの点数計算は非常に簡単です。最大でも5個の数字を足し合わせるだけですし、数字が2個揃えば10倍、3個揃えば100点になるので大抵の場合足し算するまでもなく点数の大小がハッキリします。

ここまで計算が簡単だと「自分がこう置けばX点」「次に相手がここに置けばY点」と数手先まで点数を読むことが出来ます。これ、結構重要です。

初心者でも状況をまるごと頭のなかに格納できるこのコンパクトさ。ゲームの楽しみを味わえるようになるまでの時間が一気に短縮されます。なるほど、アプリを落としてまだ3日も経ってない人間でもレビューを書けるわけですね。

③札の二面性、攻守の二面性

このゲームはランダムに配られた持ち札を配置していくゲームです。ではどんな札が手札に加わればラッキーでしょうか。

5があれば、自分の点数を増やすことが出来ます。0があれば、相手の点数を低く抑える一手を打つことが出来ます。しかし小さな数字である0でも、3枚目あれば100点として扱えます。大きな数字である5でも、たった1枚しかなければ5点です。2枚の1(10点)の半分でしかありません。

このゲームの札は状況によって役割が代わり、一概に優劣を付けられるものではありません。相手を攻撃する為に取っておいた0が、結局置くタイミングを逃して自分の首を締める結果になることも多々あります。

この札の二面性が、たった5種類のパネルしか使わないこのゲームに奥深さを与えています。
そしてまた、1回の配置が自分の守りにも、相手への攻めにも、はたまた自爆や敵に塩を送る行為にもなりうるところが、たった12ターンしかないこのゲームによりいっそう深みを与えています。

④プレイヤーのレベルに合わせた面白さ

このゲームのルールはとてもシンプルです。初心者でも楽しめます。とはいえルールがシンプルなのに難しいゲームは沢山あります。たとえば囲碁はとてもシンプルなルールなのにその面白さを味わうには時間がかかります。ではなぜこのRobot Masterは初心者でも楽しめるのでしょうか。

初心者でも楽しめるゲームには大抵、プレイヤーのレベルに応じた面白さが用意されているように思います。

このゲームの場合・・・

とにかく大きな数字を縦に並べてみる。数字が大きくなった!すごい!

とにかく同じ数字を縦に並べてみる。数字が揃った!すごい!

小さな数字を置いて相手点数を低く抑える。抑え込んだ!すごい!

相手を局所戦で消耗させ最後は読みきって勝った!すごいすごい!

というように、あらゆるレベルで「とりあえずこうしときゃいいんだろ?」という勝利の道筋が見いだせ、とりあえずの満足感を得ることが出来ます。幼稚園児と大人が遊んでも両者が楽しめるゲームです。

上級者にとって悪手でも、初心者にとっては好手なんです。それでいいんです。本人が楽しめてるんだから。

⑤序盤・中盤・終盤、あともう1回

たった12ターンしかないこのゲームでも、序盤中盤終盤があります。

様子見しながら札を配置し始め、何を残すかを考えながら手堅く点を確保してゆき、最後はお互いジリ貧になりながらギリギリのところで読み合う。素晴らしい。まさにボードゲーム界の俳句ですね。よくここまで凝縮したものです。

この凝縮が生み出すもうひとつのメリット「どの手で負けたのかが分かりやすい」これは非常に大きいです。
なぜ負けたのかが分かれば、次に活かしたくなる。1プレイ5分くらいで終わるから、また次また次とやめられない止まらない。
失敗の原因のわかりやすさが中毒性に強く結びつくのは風来のシレンを遊んだことのある人なら身を持って知っているでしょう。

負けた原因が分かるゲームは負けても楽しいものです。

⑥ロボットがかっこいい

⑦ロボットがかわいい
⑧ロボットが愛らしい
⑨ロボットが強そう
⑩ロボットがすごい

まとめ

Robot Masterの魅力、おわかり頂けたでしょうか。

最後は息切れしてしまいましたが、決してこのゲームの魅力が少ないわけではありません。単に今の自分の引き出しが足りなかっただけです。また新たな発見があったら追記します。

この手のシンプルなゲームは「これくらい自分でも思いつく」と思ってしまいがちですが、人類がマンモスを追いかけていた時代からライナークニツィアさんが考案するまでのあいだ誰も思いつかなかったわけですから、やはり凄い発明には違いありません。ボードゲームって奥が深いですね。